箱庭療法を体験してきたことについて
箱庭療法は、心理療法の一種で、箱の中にクライエントが、セラピストが見守る中で自由に部屋にあるおもちゃを入れていく手法。表現療法に位置づけられるが、作られた作品は言語化されるときもある。基本的に自由に見守られながら表現することが重要であるといわれている。現在は成人の治療にも使用されるが、もともとは遊戯療法から派生した。
前日の夜に、ぼんやりとSNSを眺めていると、この箱庭療法を体験してきたというレポート漫画が目に入った。
箱庭療法という手法をそこで初めて知り、その漫画を読み終わったころにはかなり興味深々となっていた。
でも、今のところは幸いなことに、癒されるべき深刻な悩みを抱えてはいないので、そんな自分が受けてもいいのだろうか…、という逡巡もあったが、自分も体験してみたい!というワクワクに乗ってみることにした。
セラピーを受けるにはきっと予約が必要だろうな、と思いながらふと時計を見ると、サロンの閉店時間30分前。
とりあえず電話をしてみて、その先の流れに任せよう!と思い切って問い合わせたところ、ちょうど翌日のお昼頃が空いるというので、晴れてセラピーを受けることになったのだった。
今回、お世話になったのは、件のSNSで紹介されていた、ココロゴトSalonというサロンの、ココロトーク ミニチュアでトーク という30分のメニューだ。
どんなところなんだろう…と少し緊張しながら訪れたサロンは、大きな通りに面した、とても開けた印象のあるところだった。
写真を撮っていないのでイメージで説明すると、保険屋さんとか不動産屋さんの窓口店舗のような感じ。
診療所のような感じを想像をしていたので意外だった。
担当してくださったのは、とても穏やかで静かに話す年配の男性セラピストさんで、とても話しやすかった。
さっそく箱庭療法で使用する箱を手渡される。
何もいれてない状態の写真を撮り忘れてしまったので、絵で表してみた(…のだが、わざわざ視覚化させる必要があったのだろうか…と不安になる)。
箱の中に敷きつめられているのは、キネティックサンドという、なんだかもにょもにょふわふわとした不思議な感触の砂で、ギュッと握ると固めることができる砂だった。
こんなかんじ
この砂をかためて積んで山や丘を作ったり、砂をかき分けると箱の内側の青色が出てくるので、それらを川や海に見立てたりできるらしい。
そして、箱庭となるこの白い箱ともう一つ、同じくらいの大きさのカゴを渡される。
カウンセリングブースのすぐそばに設置された棚いっぱいに置いてあるフィギュアやおもちゃ、飾りなど、箱庭に配置したいアイテムを好きなだけこのカゴに入れて持ってくるためのカゴだ。
選ぶ基準は、自分の好きなもの、気になるもの、ピンときたもの……など、本当に何でも良いらしい。
1/8スケールくらいの大きめなヱヴァンゲリヲンのフィギュアなどもあり、先述のSNS記事でもこのことが触れられていたので、わぁ本当に置いてある、と少し感動した。
それをどんなふうに箱庭に使うのか、とても見てみたい気がする。
集めてきたもの
わたしの場合は、とにかく好きだと感じるものばかりを集めてみた。
もにょもにょ砂をかき分けながら、持ってきたアイテムを心行くまま好きに配置してゆく。
自分の好きな世界を作っていくので、とっても楽しい。
幼い頃にしたままごとやお人形遊びのような感覚で、つい夢中になる。
作っている途中で、点心とバラの花を追加、持ってきていたバスを棚に戻した。
できました~とカウンセラーさんを呼び、いよいよカウンセリングの始まりだ。
まずはこの世界観やストーリーの説明から始まる。
湖でピクニック組
ちっちゃい恐竜とおばけと白猫3人組が、湖のほとりでピクニック。
種族(?)がばらばらだけど、とても仲良しという設定。
湖のほとりにある白い家は、つかれたときに自由に休めるところだ。
海でわいわい組
こっち側は南国の海のイメージで、本当だったらそことは全く縁のない、雪だるまと雪うさぎたちが、海の仲間たちと楽しくわいわいしているところ。
お互いに知らない雪の世界と、海の中の世界について、質問し合っているイメージだった。
こんな風に、自分の作った箱庭の説明を一通りし、その後、セラピストさんから「ここではどんなことを話しているの?」「この3人はどんな関係なの?」「どんなことを考えているのかな?」「今までどんな風に過ごしてきたのかな?」「この中で主役を決めるとしたら、どの子かな?」などと、深堀りをしていく。
(ちなみに主役は、湖でピクニック組のおばけと答えた。)
上記のとおり、そこまで深く考えていなかった!というストーリーや設定を聞かれることもあるので、うーん…とその場で考えて思いついたことを話す場面もあった。
カウンセラーさんとの深掘り作業で、この3人には以下のような設定ができあがった。
- 3人は通っている学校で知り合い、お互いの価値観がよく似ていることから、あっという間にすぐ仲良くなった。
- おばけは、天真爛漫で明るい子供のような性格。家族と一緒に楽しく暮らしている。
- 小さい恐竜は、以前、自分がまわりの恐竜と違ってとても小さく、まわりと違うことを気にしていたが、2人に会ってからは、自分は自分で良いと思うようになった。
- 白猫は、今まで群れをなすことなく我が道を歩いてきたが、今の2人との関係も心地よいと思っている。
- (今後3人はどうなっていくと思う?どうなって欲しい?という問いに対して)いつか学校を卒業し、3人がそれぞれの道を歩むときが来るが、変わらずこの関係を続けていってほしいと思う
なんだかこんな絵本がありそうだ。
最後にカウンセラーさんから、「この3人がこれからも良い関係を続けていくためのアイテムを一つ選んできて、配置してください」という問いかけがある。
一瞬、何が良いんだろう?と迷ったが、棚を眺めているとすぐに、これかなーというものが目に入ってきた。
3人の前にお花を設置。
当然、その心は、と問われるので、この日3人で見たお花を、思い出の象徴として置きました、と説明。
この先それぞれの道を歩んで、つらいときや落ち込んだ時に、今より多く側にいられなくなったとしても、楽しかったことや友達がいることを思い出すことで、やっていけるし、その感謝の気持ちでよりつながりも強くなるかなー、という発想だ。
箱庭の世界に関する会話がおわると、そこから読み取れたことのフィードバックがある。
簡単にまとめると、わたしの場合は、以下のような感じだった。
- 湖組や海組など、あちこちでコミュニティを発生させている
コミュニケーションや人とのつながりを大切にしている
- 海や湖など、水辺を配置している
落ち着いた静かな環境を必要とし、大切にしている。逆に言えば、騒々しい環境や人に直面するとかき乱されてしまう一面があるので、そんな時は、森林浴や海辺に出かけるなど、自然に触れるようにすると良い。
- 誰でも自由に休める施設を設置している
思いやりの心や、あたたかい人柄を示している
- 良い関係を続けるためのアイテムとして、お花=思い出を選んだことから
自分が立ち返る場所や、癒し、好きなことが、自分の支えとなるということ
カウンセリングでは、これらのセラピストさんからのフィードバックを聞いて、感じたことや自分自身の気づきを問われたりもした。
自分は、この箱庭についてのストーリーや設定を説明していくうちに、なんだか良いことばかりで夢のような世界だなーと感じていた。
そのことから、マイナスなことや闇の部分に対して目を逸らしているのかな?とも思ったのだが、ピクニック3人組の設定あたりから、確かにつらいことはあってもそれらに囚われすぎずに、プラスの明るい部分に目を向けて楽しく生きていきたい、という自分の思いに気づかされたのだった。
最後に、カウンセリング内容を総括したカウンセリングシートをセラピストさんが作成し、手渡してくれて、そこで終了となった。
わたしの場合は正直言うと、未知からの大発見!!といったような、大きな発見はなかったが、今感じていることや思っていることの整理や、再確認ができる良い機会であったと思う。
何もないところから、自分の内面や思いを言葉にするのはハードルが高いと感じるが、箱庭というツールがそれらを代弁し、言葉にするきっかけを作ってくれるので、そこがとても良い。
遊び感覚で取り組めるので、子ども相手にもよく用いられる療法らしい。
そして、この箱庭を作るという作業自体が、童心に返ったよう夢中になり、楽しんだことが、癒しにもなったと感じている。