これから失われる景色たちについて
晴海埠頭と晴海客船ターミナルの廃止、解体が正式に決まったらしい。
ただ調べてみると、2017年にそう決まっただけで、ではいつ取り壊すのか、などの具体的な日程はどうも未定であるようだ。
晴海客船ターミナルはわたしにとって、おたく時代全盛期の思い出がいっぱいの場所だ。
かつて晴海客船ターミナルではコスプレイベントが毎週のように行われていた。(今でも稀に”懐かしのあの場所!”として開催することもあるようだ)
そして、わたしはその世代ではないが、もっと前には、今東京ビッグサイトで開催されているコミックマーケットが、晴海で開催されていたらしい。
いわゆるおたくの聖地である。
わたしがレイヤー(コスプレイヤー、コスプレをする人のこと)としてもりもり活動していた頃は、今のようにスタジオ撮影があまり盛んではなかったので、よくこの晴海イベントに参加をしていた。
東京駅から出ている晴海行きのバスは、何やら長いものがはみ出したカートを持ったお嬢さん達でいつもいっぱいだった。
ちなみにデートスポットとしても有名な場所だが、過去にデートで訪れたことは、たったの1度しかない。
そんな思い出いっぱいのおたく青春の地がなくなってしまうなんて、本当にさみしい。
今年2018年の9月、レイヤー仲間でもある妹と、かの青春の地―晴海を訪れた。
以降、当事者にしかわからないような感傷がバンバン出てきますが、そうでない方はどうぞ写真だけでも見て、晴海の空気とおたくという異文化を楽しんでいただけたら幸いです。
展望台
懐かしい…!
展望台に向かうエレベーターやその通路。
雨で外に出られないから暗いのに仕方なくここであの写真を撮ったよね!?と話しながら、なんとなくその時の空気や、窓ガラスを滑る雨粒の画像が次々と頭に浮かんでくる。
この中で一番懐かしかったのは、鎖と南京錠の写真。
当時は、妹と二人で力を合わせてニコンの一眼レフを買ったばっかりで、写真へのテンションがとにかく上がっていて、あの南京錠をかっこよく撮りたい!と試行錯誤していたことを強烈に覚えている。
3階送迎デッキ
下手するともう7年とか8年とか10年前(!)のことになるので記憶は曖昧だったが、話をしながらうろうろしていると、徐々にいろいろな事がよみがえってくる…!
ここで並んで入場待ちしたよね、とかあのホールで着替えをしたよね、とか。
でも、ここで何々のこうゆう写真を撮ったよね、とかの記憶は写真という媒体で残っているせいか、わりと鮮明に頭に残ってるものだった。
2階エントランス
個人的に晴海といえば、2階エントランスの階段(大)と階段(小)!
「うわぁ~The晴海だぁ~!」
と、大いにはしゃぎながら、しゃがみ込んでターミナルホールのあおり写真を撮る姉妹の姿は当時そのまま。
幸い、デッキには観光客もほとんどおらず、自由にのびのびと回顧できて楽しかった。
この日、晴海から出航される予定の外国人の方がたくさんおり、メインラウンジではみんな思い思いにすごしているようだった。
ふと、貼られているスケジュールを見ると…。
(今気が付いたが、日付が間違っている。この日は9月16日である)
14:30に手荷物チェックして…夜中の1:00に出発…!?
そのスケジュールのゆっくりさにかなり驚いた。
晴海客船ターミナルには飲食店もないし(あるにはあるがこの日は閉まっていた)、その周辺にも時間をつぶせるようなお店はまったく見当たらない。
こんな膨大な時間をどうやって過ごせば…?と何故か自分たちが心配してしまった。
さっき3階のホールの椅子で眠っているおじさんを見かけたが、 なるほど、そういうわけだったのか。
船旅というのは時間をたっぷりと贅沢に使う旅なんだなぁ…と一つ、知らない世界を知れたのだった。
臨港広場
この辺りは、当時コスプレイベント用に開放されていなかったのか、あまり足を運んだことがなかった。
たくさんのウミネコが居てびっくりした。
乗降客コンコース
1枚目左手にあるホールで、コミケは開催されていたのかなぁ~と思いをはせる。
コンコースから下を覗くと、こちらは先ほどを上回る数の、とにかくたくさんのウミネコがいた。
ウミネコはずらーっと横に並んで、寝たり、歩き回ったり、じっとしていたり、飛び立ったり、わざわざ密集度の高い地域に降り立ったり、なんだか見ていて飽きなかった。
ぼんやりとウミネコたちを眺めていたら、結構な時間がたっていたほどだ。
そうだ、船の出発までの時間は、ウミネコを眺めて過ごすことをお勧めする。
おわりに
晴海客船ターミナルの周辺には、大きな建物の骨組みがたくさんできており、ちゃくちゃくと工事が進んでいるようだ。
改めて写真を見返して、こうして記事にみると、晴海客船ターミナルがなくなってしまうのは本当にさびしく感じる。
これで最後、とは言わず、今後まだあるうちに再びでかけてみようと思った。
ちなみにこの日撮った展望台の写真と、2016年に訪れた時に撮った写真の構図が似ていてびっくりした。
「W」の位置とか、右側中段にある窓枠の中に入ってる東京タワーの位置はほぼ同じ。
人の趣味やセンスというのはそう変わらないものなんだぁと思ったのだった。